2013年5月11日土曜日

トヨタ業績と為替レート~1円で利益が350億円動く

つい先日、トヨタ自動車の2013年3月期決算が発表されました。売上高、利益、共に当初予想を大きく上回る好業績でした。その理由は、アベノミクスによる為替レートの円安にあります。

・連結売上高=22兆641億円(前年同期比+18.7%増)
・営業利益=1兆3208億円(同+271.4%増)
・純利益=9621億円(同+200%超の増加)

いずれの数値も、アナリスト予想や、トヨタ自身が発表していた予想よりも、良い数字でした。これを受けて、トヨタの株価は上昇し、実に5年ぶりに6000円台を回復しました。ちなみに、過去のトヨタ自動車の売上高・利益はリンク先のページで紹介しています。

好業績の理由は、決算期に円安になった事です。ご承知のように、昨年末に民主党政権が倒れてから、為替レートは一気に円安ドル高に進んでおり、1ドル=100円の節目を迎えています。トヨタは前期中、想定為替レートを80円前後で発表していたので、現在のレートは大幅なプラスサプライズになっています。

トヨタ自動車は、為替レートが1円動くと、営業利益がおよそ350億円動くとされています(ちなみに日産だと150億円)。想定為替レート80円に対して、実際のレートが100円近くにまで円安が進んでいるので、これだけで約7000億円もの「為替差益」が生じている事になります。

トヨタはリーマンショック以降、業績の不振が続いていましたが、その理由は大きく二つありました。一つは、リーマンショックの景気の落ち込みによる、世界的な自動車販売不振。そしてもう一つが、為替レートの異常な円高です。不景気による販売不振に関しては、日本政府がエコカー補助金を出したように、各国でも販売補助制度が遂行されていましたし、トヨタ自身もプリウスを大幅値下げするなど、販売促進の努力を行ってきました。

しかし、為替レートの円高は、トヨタ自身はどうしようもありません。世界各国は、自国の輸出を優位にすべく、リーマンショック以降に通貨切り下げ合戦を行っていましたが、日本だけは蚊帳の外でした。財務省や日銀、そして民主党がタッグを組んだ「デフレ利権」が経済を牛耳っていた為、為替は円の独歩高でした。トヨタを初めとする輸出企業は、このデフレ利権の為に犠牲にされてきたのです。

しかし、民主党は崩壊し、デフレ利権の大王=白川日銀総裁は職を追われました。安倍自民党と黒田日銀新総裁は、円安・インフレを目論む「アベノミクス」を実行し始めたので、余程の天変地異でも起きない限り、1ドル=70円台というような馬鹿げた円高はもう起きないでしょう。

このままドル円相場が、110円にまで進行すれば、トヨタの営業利益はさらに3~4000億円増加します。1ドル=120円なら、7000億円増えるので、2008年に付けた史上最高益の更新も視野に入ってきます。トヨタ自動車とその株主にとっては、アベノミクスは強烈な追い風であり、大歓迎の政策なのです。